先に紹介したメキシコやロシアのローカル切手の数年前に、大量の円形切手を発行していた国があります。それはエジプトで、1864年から1892年にかけて、下に展示している様な円形に型抜きした「切手」を発行していました。これらの円形切手は、通称"interpostal seal"と呼ばれており、通常のカタログには収録されていません。しかしこれらは、一種の公用切手として郵便物に貼って使われたものなのです。
ちなみに、未使用切手には裏糊もひかれていますし、使用済切手には消印が押されています。このinterpostal sealが最初に発行されたのは1864年です。しかし画像を見て判るとおり、最初のシリーズ(TYPE1)は、民間の郵便業者であるPOSTA EUROPEA社が発行したものです。この会社は、1830年代初頭に、当初はヨーロッパ宛の郵便物を扱う会社として開業しました。その後経営者が変わって国内郵便にも業務を広げ、政府の郵便をしのぐほど利用されるようになったため、ついには1862年にエジプト南部地域の郵便の独占営業権(10年間)を得るまでになりました。その際、独占営業権の見返りとして、政府の公用郵便物をすべて無料で配達する契約が交わされ、その公用郵便物に貼付されるために作られたのが、これらのinterpostal sealです。
その後、この会社の郵便事業は、1865年にエジプト政府に丸ごと買収された(経営者は郵政庁の長官に就任した)ため、このinterpostal sealもエジプト郵政庁名義の発行のものになりました(TYPE2以降)。なお、エジプトの普通切手の第1号も同時期に発行されています。
これらは、デザインを変えながらTYPE11まで発行され続けました。また、TYPE9までは各都市(郵便局)別に発行されたため種類も膨大であり、色違い等のバラエティを含めると、2,000種程度はあるそうです。interpostal sealの用途は、大きく3つあったと考えられています。1つ目は上述の公用切手としての使用、2つ目は郵便局間で郵便物を転送する際の通信事務封筒での使用(Western Stamp Collector誌)、3つ目は政府宛の郵便物の封緘シールとしての使用(L'Orient lilatelique誌1956年7月号)です。
2つ目の用途と思われる実逓カバーを入手しましたので、併せてご紹介します。
エジプト(interpostal seal)
(TYPE1・POSTA EUROPEA社発行・1864年)
(TYPE2・1865-66年/TYPE3・1867年)
(TYPE4・1868年/TYPE5・1871年)
(TYPE6・1878年)
(TYPE7・1879-80年/TYPE8・1880年)
(TYPE9・1884年)
(TYPE10・1887年/TYPE11・1890年)
(郵便局間の通信事務封筒に用いられた例)
(参考:1895年発行のScott International Album のページ)
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